カナダの医療保険-MSP& Pharmacare

カナダに戻った翌日、日加ヘルスケア協会の主催する健康講座―「BC州の健康保険・医薬品制度」に出席しました。この講座に出席して、移住後4年も経ったのに最も重要な健康保険について、正確な知識を持っていなかったことに気が付きました。私が知っていたことと言えば、日本と同じ「皆保険」であり、保険料を支払えば、病気や怪我の治療費・手術・入院費が全額カバーされるということぐらい。ようやく、正確な知識を得ることができたのです。

★MSP-カナダの健康保険への加入
私達が加入している健康保険は、MSP(Medical Service Plan),通称「BCメディカル」というもので、BC住民は加入が義務付けられています。加入の要件は、カナダ市民・カナダ永住者・長期滞在ビザ保有者など。約3ヶ月の待機期間があり、一人一人にケアカード(保険証)が郵送されます。

★MSPの保証の範囲
このカードを持つと、下記のサービスが全額カバーされます。(MSP登録医による診察が条件)
怪我や病気のための治療/手術/入院
出産(検診含む)
血液、X線、CTなどの診断
医療的な歯/口腔手術や眼の検診(状況や年齢などの条件付で)
これ以外の、例えば歯の治療や眼鏡や補聴器などはカナダは基本的に自己負担。
またカイロプラクティック・マッサージ・自然療法・理学療法なども原則は自己負担ですが、低所得の人にはある程度のMSPからの補助があります。

★MSPの保険料
世帯ごとに支払います。2009年までは 月額1人世帯につき$54、2人世帯は$96、3人以上の世帯は$108でしたが、2010年1月から1人世帯($57)2人世帯($102)3人以上世帯($114)に値上げされました。上記の金額はFull rate で、年収(Ajusted net income)$30,000超の人が払わなければならない金額です。Full rateを100%とし、年収が低くなるに従い20%刻みで保険料が軽減され、最も低い年収($22,000以下)の層は保険料がゼロになっています。

★Pharmacare(ファーマケア)への加入
また日本の健康保険制度と大きく違うのは、MSPという健康保険制度とは別に、ファーマケア(Pharmacare)という薬の負担に関してのシステムがあることです。薬や医療器具についての保険で、この保険に加入できるのはMSP加入者ですが、それぞれが自らこの保険への加入を申請しなければなりません。2003年にできたシステムなので、長くBC州に住む人もこの保険について知らない人が多く、全員が加入していないのが実情です。もし、この保険に加入していなければ、薬代はMSPではカバーされないので、全額自己負担になってしまうのです。

★Pharmacare(ファーマケア)の仕組み
この保険の申請には、2年前の世帯年収(確定申告書のNet incomeの数字)が必要で、その年収により薬や医療器具などの負担の割合が決められるのです。計算は少し複雑です。
まず、年収(Annual net income)により、免責額が決められ、それを越えた金額は70%(1939年以前に生まれた人は75%)をファーマケアが負担します。最も低い年収($15,000未満)の人は免責額はゼロ、つまり最初の1ドルから70%カバーされます。
次に患者が負担する年間の上限額も年収によって決るのですが、それを越えると全額をファーマケアが負担します。勿論、年収の高い人の場合、ファーマケアが負担してくれる割合は小さくなりますが、薬代が高額になれば、ある程度ファーマケアから補助が得られるようになっています。
保険でカバーされる薬は、効力や薬価により指定され、資格ある医師が処方した薬でなければなりません。また薬も、医者はむやみに薬を処方せず、風邪ぐらいの病気なら全く薬を出さないそうです。日本で7種類の薬を出された人が、同じ病気でカナダで治療を受けたら、たった2種類の薬しか処方されなかったと言う話もききました。
以上が医療と薬についてのBC州の保険のシステムの概要です。

また日本の医療制度の違いは、カナダではまずファミリードクター制を採用していることです。医者にかかる場合はまずファミリードクターに予約を取ってから会いに行く、というのが一般的です。総合病院または専門医へは、ファミリードクターの紹介状がなければ診てもらえません。
急に具合が悪くなった時は、まずファミリードクターにかかりますが、休暇中であったり、すぐ診てもらえない場合など、予約なしで誰でも利用可能なウォークインクリニックに行きます。救急の場合は、救急車を呼び病院へ直接駆け込みます。

このようなカナダ医療システムの下で、ファミリードクター制による病歴の管理は良い面がありますが、実際には慢性的な医師不足で適当なファミリードクターを見つけるのはかなり難しく、長年カナダに住んでいてもファミリードクターを持たず、病気になったらウォークインクリニックに駆け込む人が結構多いのです。因みに私もまだファミリードクターをもっていません。

なぜこんなことが起きるのでしょうか。MSPの負担で治療費など全額負担してくれるのは有難いですが、結局その費用などはBC州の税金で払う訳で、できるだけ出費を抑えるため、医療器械の整備が遅れたり、医療従事者の給料を低く抑えることになるのです。その結果、カナダの医者が治療費の高いアメリカに流れていき、カナダ国内では深刻な医師&看護師不足が起きてしまうのだとか。そのため、命に関わる病気でなければ、患者は検査も治療も長い時間(時には数ヶ月)、待機させられる羽目になるのでしょう。

過剰検査と薬漬けの日本、検査も薬も最小限のカナダ、なにか両極端の医療をみるような気がします。私はまだカナダでは、医者の診察も治療も受けたことがなく、当然薬も処方されたことがありません。でも将来、いつお世話になるかわかりませんので、しっかりとカナダのシステムを理解しておきたいと思って、自分の備忘録として纏めました。
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by amtask | 2010-06-15 16:37 | ◎ ひとり言 | Comments(6)
Commented by rabbitjump at 2010-06-16 09:08 x
お国かわれば、、日本とカナダ、ずいぶん違いますね~
確かに日本は薬漬け、、。
日本も最近では家庭医から紹介状をもらってから
大きな病院へと変わってきているようですが。
どちらにしても安心して治療が受けられるようにして欲しいものですね。
生身の体、いつどんなことになるかわかりませんが、それでも
少しでも病気にならないようにせめて日ごろよいといわれる
生活習慣を身につけておきたいと思うこの頃です。
Commented by amtask at 2010-06-16 10:07 x
rabbitさん 
日本もカナダも、理想的な医療とは程遠いですね。
すぐに診察が受けられる日本は安心なようですが、過剰な検査をする病院もあるようですし、病気になって待たされるのは不安です。
生活習慣と食事が大事だと、つくづく思う今日この頃です。
Commented by homareko at 2010-06-18 12:35 x
先日はお世話様でした。
重要なお知らせありがとうございます。
これだと私も保険に入れると言う事ですね、以前他の人からは聞いていたのですが。
でもまだ加入しなくてもいいかな、と思っています。
ありがとうございました。
Commented by amtask at 2010-06-19 01:41 x
homarekoさん
おはようございます。保険ですから、使うか使わないかは
わかりませんが、入っていれば安心ですね。ファーマケアの仕組みは、「収入によって薬の値段が違う」という話は聞いていました。
複雑ですが、良く考えられた仕組みだと思います。
Commented by homareko at 2010-06-19 12:53 x
再度。
収入によって無料になったり、値段が違うのは凄く良い事だと思います。
日本の政治家にはない発想ですね、庶民に優しいのが一番ですからね。
ここはそう意味では良いのではないでしょうか。
Commented by amtask at 2010-06-20 02:52 x
homerekoさん
こんにちわ。
ファーマケアについては、わざと複雑にしているのではなく
、きめ細やかにとても合理的にできているのだと思いました。
人によって年間の上限額が決められているのが安心です。
それ以上は政府が負担、自然に必要以上の薬が出なくなるのも
納得できました。日本も少し工夫が必要ですね。
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