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ひとり言―異文化の中の異文化

バンクーバーに戻り、久しぶりに近所のEnglish Conversation Class に参加しました。
この教室は月曜日の夕方7時から1時間半、先生を中心に多い時で10人位、少ない時は2~3人の人達が集まり、近況を話したり、簡単な英語のクイズをやったり、地域の情報を教えてもらったり、お勉強というより情報交換の場でもあるのです。
先生は英国から移民して来た中年の女性、顔馴染みになった出席者は中国人ビジネスマン・トルコやセルビヤから家族で移民してきた中年女性達・スペインからの移民してきた男性など。また日本・韓国・東南アジアからのロングステイヤーや学生も来たり、英語で話をしたい人なら誰でも受け入れてくれるのです。

先週、その教室で先生を中心に5~6人で雑談をしていると、子供を連れたイスラムの女性が現れました。イスラム女性は頭にスカーフを被らなくてはならないのですが、彼女はスカーフを覆っているだけでなく、目から下は黒い長方形の布を垂らしていました。当然、顔が見えません。その姿に先生も出席者も、一瞬びっくりして顔を見合わせました。
先生は、英語が話せないと言う彼女から名前や出身国を聞いている様子でしたが、分ったことは出身国がサウジアラビアぐらい。しばらく出席者も彼女に話しかける努力をしたのですが、何も通じません。すると、彼女は携帯電話を取り出し、誰かと話を始めたかと思うと、先生のそばに来て受話器を渡しました。先生は「バンクーバーに来てどれぐらい経つの?」ときき、先方は「1ヶ月」と答えたようです。多分電話の主は彼女の夫なのでしょう。7歳だという女の子は、不安げに上目遣いでじっとそのやり取りを見ていました。イスラム系の国トルコからきた中年の女性が傍に行って色々話しかけても、答えている様子はありません。再び皆諦めて会話に戻りましたが、その親子連れはじっとテーブルの一番端で、私達を見ているだけ。先生は無視もできないし、無理強いもできないし、と少し困っているようでした。

そして1週間後の昨日、久しぶりに顔を見せたセルビヤのおばさん・中国人ビジネスマン、スペイン人の男性・新しい参加者のイランからの留学生などが先生を中心に話に花を咲かせていると、先週のイスラム女性と子供が現れたのです。しかも女の子2人を連れて。
先週出席した人達は、子供の数にちょっとびっくり。私も先週は1人、今週2人、来週は3人かしら?と、思ってしまいました。
昨日も、彼女はスカーフと同じ布で顔を覆っていて、コートは着たまま。そして子供2人を両脇に座らせて、会話にもゲームにも加わろうとしません。時々、先生が彼女のそばまで行って何か話しかけるのですが、布で覆われた彼女の口から声を聞くことはできませんでした。
私は最初、ほとんど日本人がいないこのクラス自体が異文化だと感じていましたが、全く周囲と溶け込もうとしないイスラム女性を見て、もっと大きな異文化を感じたのです。
スペイン人男性は、「怖い」と言って、先生の傍の前の方の席に移ってきました。
昨日はたまたま、モスクワの空港で自爆テロが起き、数十人の人が亡くなったという報道があったばかり。テロ=イスラムとは限りませんが、眼以外は全部衣服で覆い、暖かい部屋なのにコートも脱がない彼女をみると、あの衣服の下に何か隠すことだってできるのです。スペイン人男性が怖いと言うのも分るような気がしたのです。

それにしても彼女はなぜ、ここに来るのでしょう。雨の降る夜、小さな2人の子供を連れてくるのは大変なこと。それに英語を学びに来ているとは思えないし、楽しんでいるようにも見えません。もともと会話が中心のこのクラスは、基本的な英語を学ぶ場所ではないのです。自分の意志ではなく、夫から命令されているのでしょうか。
とにかくイスラムの社会のシステムは、知れば知るほど驚くことが多いのです。
例えば、英語学校のクラスメートから聞いた話、イスラム女性は男性に(夫の兄弟にも)顔を見せてはならない。また、イランでは目だけ出した体全体を覆う衣服を纏わないで町にでると、刑務所に連行されるなど、複数のイランの人たちから聞きました。

最近カナダでも、イスラム系の人達が増えたといいます。ある統計によると、2001年は、カナダの人口の2%未満だったのが、2010年にはその約2倍になったそうです。
世界の人口で考えれば、2009年には25%、言い換えれば4人に1人がイスラム系になり、今も増え続けているとか。
急速にイスラム系が増え続けているヨーロッパでは、最初にイスラム化(イスラム系移民が人口の過半数を越える)するのはどの大都市か、といった憶測が飛び交っているほど。

移民の国では、自分の祖国の文化以外は皆異文化です。移民同士、それぞれの異文化はお互い様。それでも同じ移民の国の住む住民同士だと思えば、お互いに理解し、認め合うことが必要です。そのために共通語である英語を学び、分かり合える努力をしなえれば、異文化を持つ人々が共存して平和に快適に暮らすことは難しくなると思います。
このイスラム女性は、来週も来るのでしょうか。また皆に溶け込む日がくるのでしょうか。そんなことを、とりとめも無く考えながら、私は暗い雨の中、家路についたのです。
by amtask | 2011-01-27 09:01 | ◎ ひとり言 | Comments(2)
Commented by rabbitjump at 2011-01-27 10:02 x
異国の地で皆さんと仲良くするには多くの時間が必要でしょうが、
まずは自分からその中に勇気を出してとけ込んでいかなくてはと
思いますね。
イスラムの世界には独特のものがあるのでしょうが、。
せっかく世界のいろいろな国の方が集まってお話をすることが出来る
素晴らしいお教室なのですものね。
私だったらまずは笑顔で(知っている限りの少ない英語を駆使して?)
ゼスチャーからでも入りたいと思いますね。
amtaskさんのおっしゃるとおりなんだか不気味ですね。
出席の皆様がテロのことなど心配しないですむように、、
みんなが仲良く過ごせるように、、
彼女の心のベールがときほどかれますように、願います。


Commented by amtask at 2011-01-27 16:39 x
rabbitさん
色々な異文化があるけど、イスラムの文化、私にとっては最も大きな異文化、理解するのも難しそうです。
アラブ系の人々はとても饒舌で、言語を習得するのも早い人が多いのです。
きっと彼女も打ち解ければ楽しくおしゃべりができると思うのですが・・・。
ただ女性は、昔の日本の女性のように禁止されていることが多いので、限られたところでしか、自分をさらけ出すことができないのかもしれません。
人間って何も知らされないものに対して不安を感じますよね。
顔も見えない、声も出さない人に対して、こちら側は何も情報を持たないわけで、不安・不気味というような感情をもってしまうのも仕方がないと思います。
世界が平和になるためには、色々な民族や宗教の人がお互いに理解し、認め合うことが必要です。
ある程度、自分はこういう人なのだとさらけ出さないと親しくなれないというような・・・。
このクラス、英語が不充分でも、まず挨拶し、ニコニコしているだけでも大丈夫なのです。
例のイスラムの女性も、スカーフは被っても顔をだして、笑顔を見せて欲しいと思いますが、宗教的に無理なことなのかもしれません。

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