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紅葉を追いかける旅(3)

函館から戻った翌々日、次の目的地に向けて東京を出発。
その日の最初の目的地は篠ノ井線の姨捨駅。なぜ姨捨なのか、棚田が見たかったからです。今回の旅行も1泊2日の予定、一番の目的地は黒部宇奈月、夕方までに宇奈月温泉まで行くことが必須の条件でした。その前にどこに行くか色々考えました。高岡から出ている氷見線も魅力的、氷見の近くに素敵な棚田があると知り、その棚田も見たかったので、色々時刻表を調べてみると、その棚田を見るには、時間的に難しいことがわかりました。
その時、頭をよぎったのが、今年の夏、姨捨を旅された友人Sさんのblog、その中で見た棚田の景色。もう一度、時刻表で調べると、姥捨は長野駅からそれほど遠くないことがわかり、急遽姨捨に行くことしたのです。

出発の日、朝8時過ぎの北陸新幹線「かがやき」に乗り、1時間半も乗ると長野駅。そこで篠ノ井線に乗り換えて、30分程で姥捨駅に着きました。棚田や長楽寺はすべて徒歩圏内。姥捨駅で降りたのは、私達を含めてほんの数人、そして棚田に向けて歩き出したのは私達2人だけでした。
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姨捨駅は無人駅ですが、列車が着いた時、偶々駅員の人がいて、色々質問すると、地図をくれました。線路沿いの道をしばらく歩き、左手に見える棚田の方向に曲がるとその周辺は、収穫が終わった後の棚田が広がっていました。坂は急なので転ばないように気を付けて歩きました。
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その日は良く晴れて暑い程の陽気。遮るものが何もない、人は誰もいない、稲は刈り取られた後でちょっと殺風景な風景。でも晴れているので遠景はよく見えました。
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坂を下りながら左の方に向かっていくと、月の名所の標識などがあり、姨捨は、棚田と月の相乗効果で有名になった所だと知りました。(名月の里棚田、発祥の地、等と書かれています)
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暫く歩くと、茅葺屋根の建物が見えてきました。近寄ってみると、どうも芭蕉に関連のある建物のよう。この芭蕉ゆかりの建物は長楽寺の門脇に建っていて、「芭蕉翁面影」という立札が立っていました。
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姥捨で見るべきところは、棚田と並んで長楽寺。
長楽寺はどんなお寺かというと、「長楽寺は姥捨の棚田の傍にあり、観月の名所として知られる天台宗の寺院。紅葉が盛りとなる10月末は特に風情を増す。松尾芭蕉はじめ多くの文人が訪れ、50もの句碑が立ち並ぶ。眼下に眺望の広がる境内には多くの歌碑や句碑がある。中でも門脇の松尾芭蕉の句「俤や姥一人なく月の友」を刻んだおもかげ塚(芭蕉翁面影塚)が著名である。」
でも長楽寺に着いたころは、疲れてしまって沢山の句碑を読む元気がありませんでした。
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長楽寺の玄関に辿りつくのも沢山の階段を登らなければなりませんが、登ってみると、ススキや秋の花に彩られた落ち着いた趣のある光景が見られました。
お賽銭をお賽銭箱に入れて、仏様にご挨拶した後は、林檎とおからかりんとうを買いました。これが私達のランチになろうとは‼ その時は思ってもみませんでした。

お寺の玄関から反対側の階段を下りると、姥捨て会館に行けるはず。でも行って見ると会館の前の駐車場や広場には誰もいません。そこに1台の車からおじさんが降りてきて、私達に「何で来たのですか?」と尋ねました。「電車で」と答えると、彼は車できて、この会館でお昼を食べようと思ったけど、今日はお休み。街の方から来たけど街にも何もなかった。車でここまで来るのも大変だった。」というのです。では、私達のお昼はどうなるの?でも街の方まで行かなくてよかった、貴重な情報が得られたと思いました。
こうなったら、早く駅に戻るしかありません。もう一度御寺の境内に戻った時、一人のおばあさんが歩いてきて「何時もの年だと、この周辺は真っ赤に紅葉するのに、今年はまだまだ。やはり陽気が変わったのね。」などと話してくれました。やはり長楽寺の説明の通り、いつもの年だと今が紅葉の盛りの時期だったのですが、今年は紅葉が遅く、ちょっと期待外れ。おばあさんの話をもっともききたかったけど、今は姥捨駅にもどるしかありません。
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依然としてこの地域の坂道はきついし、日が照って暑いし、駅までの距離はそれほど遠くないのに疲れてしまいました。丘の中腹に古びたベンチを見つけました。でも一人のおじさんが座っていましたが、このベンチに座らせてもらい、約30分程、そのおじさんから色々な話を聞くことができました。おじさんは71歳、平地で農業をするのは楽でも急傾斜にある畑を耕すのは大変。でも後継ぎがいない野で自分の代で終わるだろう。この急激な変化の気候で病人が増えて、近くの診療所は待つ人であふれている。」など話してくれました。この近くの農村にも高齢化の問題は深刻のようでした。
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色々話を聞き、体も休まったので、再び駅に向かいました。列車が着いた時に居た駅員のおじさんも、列車を待つ人も誰もいません。姥捨て会館でお昼を食べる予定だった私達は、凄くお腹が空いて、駅の片隅のベンチで、家から持ってきた小さなお握りと、お寺で買ったりんごとおからかりんとうを食べました。何とこの駅には自動販売機もないので、ペットボトルに残ったお水で喉を潤しました。林檎はシナノスイートという種類、少し小ぶりですが、とても美味しくて、生き返ったような気がしました。
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しばらく休んでいると、予定通りの時間に長野行きに電車が来ました。姥捨駅のホームのベンチが外を向いて寂しげに並んでいます。それは良い景色を眺めるためだとか。その変わった駅のホームを後にして、約1時間後には大きくて近代的な新幹線の長野駅に戻ったのです。
(その4に続きます)
by amtask | 2016-11-09 11:16
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