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バンクーバーの不動産バブル(その後1)

衝撃的な外国人に課せられる新税の発効から半年が経ちました。

今年に入って、固定資産税の評価額と税額を知らせる郵便が届きました。
2015年春に住宅を購入した我家も、昨年は固定資産税の評価額の25%上昇したのに、今年は更に31%も上昇。当然固定資産税も増額されるのです。この数値を見ただけでも、バブルだと思うでしょう。
これは我家だけでなく、メトロバンクーバー(※参照)の全域にわたって、価格高騰しているようです。
この異常な価格高騰を抑えるために、連邦・BC州・バンクーバー市は、昨年の夏以降に大きな課税やルール変更を3つも決めて施行しました。
15%の外国人に対する取得税課税は、昨年9月7日付のひとり言で述べた通りですが、
その後2つの重要な課税とルール変更がありました。この合計3つについての影響を考えてみました。

それぞれについて、簡単な説明をしてみると、
①15%の追加取得税については、夏に載せたひとり言で詳しく書いので、詳しい説明は省くが、これは外国人に対するもので、BC州が決めた課税
②Empty home tax(空き家税)は、非居住外国人だけでなく、バンクーバー市に住宅を持つすべての人が対象、課税されるのはEmpty(空き家)とみなされる場合で、固定資産評価額の1%が、毎年バンクーバー市から課税される。
空き家とみなされないためには、所有者(本人・家族・友人)の本宅になっているか、または1年に合計180日以上貸しに出され、30日以上の連続した賃貸期間があればよい。
③Canada Mortgage Rule(国が決めた住宅ローンのルール)の変更
現在は、歴史的低金利のため比較的住宅購入が容易だが、将来金利が高騰した場合、住宅ローンを組んだ買主は、大きな借金を抱えることになる。
詳細は、従来通り売買価格の5%以上のDown payment(自己資金)があればローンが組めるのが、新しいルールでは次の要件が加わった。
自己資金が20%を超えていると、今まで同様に、銀行との交渉でLow ratio insurance (だいたい2.5%)と低金利のローンが組めるが、自己資金が20%未満の場合、Mortgage insurance(ローン保証料)が必要になる。この利率は高く(4.64%)、High Ratio Mortgageと言われている。
またすべてのInsured Mortgage には、Mortgage rate stress testを受けなければならなくなった。これは金利が上昇した場合でも、ローンが返済できるかどうかを見るため。
また買主の住宅関連費用(ローン返済を含む)の所得に占める割合が39%以内であるか、他の借金を含めて44%を超えていないかを見るものだ。
このルール変更の目的は、国民を住宅ローン破産から守るためと、銀行の経営悪化を防ぐためだという。

この3つの新税やルールの変更で、これから先、どんな影響が出てくるのでしょうか。
①15%追加所得税のために、多くの外国人バイヤーは、対象外の地域(カナダ国外や他の州など)の不動産に投資をする。現に高級住宅地として知られているウエストバンクーバーはこの税の発効した8月には1戸も売れなかったという(前年同月は50数件売れた)。 また最近、この新税の対象外地域であるBC州の州都ビクトリアの不動産が高騰している。世界の富裕層のマネーがバンクーバーから移動を始めたようです。

②Empty home tax は、2017年1月から対象期間となり、1年後の2018年の2月に課税される。 例えば、カナダ市民でもBC州の住民でも、バンクーバーにセカンドハウスを持ち、半年以上貸しに出さないと、固定資産評価額の1%課税は免れない。例えば富裕な外国人やカナダ人が2ミリオンの住宅を保有した場合、1年に2万ドルのEmpty tax が課税されることになる。バンクーバー市の不動産の売れ行きがある程度減るかもしれませんが、この政策で空き家が減るかどうか疑問です。

③Mortgage のルールは連邦政府が決めたので、ルールの適用はBC州やバンクーバー市に限りませんが、住宅価格が高騰したトロントやバンクーバー等での住宅購入が住宅の一次取得者にとっては、以前にもまして難しくなりました。
自己資金が5%しか用意できない買主に、普通の金利(2.5%位)の2倍近い高金利の支払いが強いられ、住宅購入を諦める庶民も増えると思います。特に高額ではない住宅の売れ行きも陰りが出るでしょう。
このルールは連邦政府のルールなので、住宅価格の高騰が続いたBC州は、住宅一字取得者の負担を軽減するため、自己資金が20%に満たない購入者に、低金利で資金を貸し付けることを決めました。でもその条件をみると、どこまで負担軽減が可能になるのか不透明。

2016年の後半に決まったこの劇的な3つの課税やルール変更で、半年後の2016年の年末の統計はどう変わったのか、メトロバンクーバーの数値を見ると、住宅全体の価格は、2016年後半の6か月で、2.2%の下落。実際はもっと下がっていて、戸建ての家は、10%も下がった取引もあったというのです。
一方、先月比でみると、戸建て住宅は-1.8%、コンドミニアムは-0.3%となっていて、コンドミニアムの下落は殆どなく、むしろ上昇傾向にある。戸建て住宅を諦めた層が、コンドミニアムに流れたと考えられています。

いずれにしても、この状況下で問題なのは、市場に出される売り物件が極端に減ってしまっていること。2017年の市況はどうなるのか、不動産業者に聞いてみたところ、「このまま上がり続けるでしょう」とか、「上がり過ぎた分は下がるはずだが、下がりすぎるのが心配」と、色々な意見が交錯しているようです。
2017年もまだ始まったばかり、今後の動向を見守らなければなりませんが、今のところ、バンクーバの不動産が値上がりする要素が見当たらないように、私には思えてなりません。

最近の新聞で次のような記事を読みました。要約すると、
「バンクーバーに住む現役世代の管理職クラスの人達は、値上がりした住宅を売り、家が買い易い郊外へ移ろうと考えている人が増えた、と12月の調査で分かった。そしてバンクーバーの住宅所有者(35~54歳)の40%、(18~34歳)の35%は、家が買い易い他の都市に引っ越すことを考えているという。(by Resonance Consultancy)」

この記事を読んで、現役世代の多くが高騰した家を売り、その資金をもって他国や他州に移ってしまったら、バンクーバー市の経済を支えていた層が去り、地域の消費も経済も落ち込むのではないか。またその家を買える人は一般庶民ではなく、富裕な外国人や高齢者かもしれない。その家を買った富裕な外国人は、セカンドハウスを貸しに出すこともなく、Empty taxを払い、その家は1年の大半は空き家になる。空き家にならない家は高齢者が住む。そうなったら、バンクーバーの人口は減り、閑散とした街はシニアホームのような雰囲気になり、学校に通う子供は減り、活気のない街になってしまうのではないか、という不安が頭をよぎったのです。
そう思って今住んでいる街を見回しても、学齢期の子供たちは殆ど見かけません。
以前住んでいた古いウェストエンドのアパートの前は、日本でいう公立の小中学校でした。
時折、元気な子供たちの声が聞こえ、学校の退け時は子供たちが歩く街、それが健全な街なのではないかという気がするのです。

※メトロバンクーバー(英語:Metro Vancouver)は、カナダのブリティッシュコロンビア州南西部にある地方行政区のひとつで、カナダ国内第3位の都市圏を形成している。経済はバンクーバーを中心に構成されているが、行政府は同市の東に隣接するバーナビーに置かれている。
by amtask | 2017-01-29 11:50 | ◎ ひとり言 | Comments(2)
Commented by rabbitjump at 2017-01-29 16:32
固定資産税、随分上がるのですね。
先を考えると、確かに高値になったら
売って安いところへ越す人が
増えるのでしょうね。
若い人が減ると町はひっそりとなりますね。
日本も場所によって、若い人の住みやすい町と
老人が多い町の差が出てきたように思います。
固定資産税、都市計画税も少しずつ上がっています。
税金の使い道をもっと考えてほしいな~と 思います。

Commented by amtask at 2017-01-30 03:38
rabbitさま
おはようございます。
11年前、バンクーバーに来た時から、住宅バブルを感じていました。
30年前の日本のバブルと同じ状況、いつか弾けると思いながら10年、
とうとう政府が乗り出して、バブルを弾けさせたのでしょう。
固定資産税や、15%の外国人への課税で得た税金は、
中低所得者の為の賃貸住宅建設資金に回すそうです。
早く落ち着いて暮らせる住環境になってほしいと思います。
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