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「内部被爆」という本

日本から戻る時、いつも何冊か日本の本を買うのが習慣になっていますが、今回選んだ数冊を読んで、特に心に残ったのは「内部被爆」という本でした。
「内部被爆」著者-肥田舜太郎 出版社―扶桑新書116 発行日―2012・3・19

私はこの本から3つのことを学びました。
まず一つ目は内部被爆の恐さについて。
昨年の3月11日以来、3回日本へ一時帰国しましたが、日本に戻るといつも私の予想以上に周囲の人々は落着いているように見えるのです。でも私は福島第一原発の不安から逃れることはできません。それは真実が分からないからです。この本は「真実を知りたい」という私の疑問に充分答えてくれました。
まず、被爆には内部被爆と外部被爆がありますが、内部被爆は私が想像していた以上に恐いということが分かりました。それは合計の放射線量(線量×時間)が同じであっても、高線量の外部被爆に比べて、低線量を長時間浴びる内部被爆の方が細胞膜を破壊しやすいというのです。この低線料被爆のメカニズムを解明したのが「ペトカウ効果」で、カナダの原子力研究所で偶然発見されたそうです。またぺトカウ効果により、次のようなことが明らかになったのです。
1、低線量の放射線は活性酸素を発生させ、細胞を傷つける。
2、 免疫システムが阻害され、感染症の危険が増す。
3、細胞膜が傷つけられる結果として、予想もつかない様々な病気を引き起こす。
具体的に言えば、ガン、遺伝的な障害が起き易くなり、奇形児などが生まれる確率が上がるのです。
被爆というと原爆の光に直接当たったり、原発の施設で働く人々が受ける強い放射線量を浴びる高線量被爆が思い浮かびますが、政府が国民に言っている「直ちに影響はありません」、と言う低線量被爆・内部被爆については軽く考えられていたと思います。
外部被爆は勿論恐いですが、内部被爆は放射線物質を自分の体の中に取り込んでしまうので、逃げることができません。低線量であっても人の身体の内部に入り込んで、絶え間なく人を被爆させ続けるのです。今回の福島第一の事故でも、日本人の多くは知らず知らずのうちに空気や水・食品などを通して、体の中に取り込み、内部から被爆し、色々な病気を発症し、更に傷ついた遺伝子が未だ見ぬ子孫にまで引き継がれていくのです。直ちに影響はなくても、日本国民の健康は損なわれ、日本は衰退して行くことになるのです。
すでに福島を中心として、色々な悪影響が出始めているそうです。

二番目に学んだことは、国は国民を守らない、日本の当局は、未だにアメリカに隷属しているという事実です。
低線量・内部被爆を、国は一貫してその影響を否定してきた結果、晩発性障害が起きても、日本の医学会はそれを無視してきたのです。その理由は、米国が原爆を落とした後、日本は米国の占領下におかれ、原爆の影響を調査したり研究することを禁じられたのです。この本の著者も、何度か日本の当局に捕まったそうです。その後、日本が行なったことは、申請した被爆者に被爆者手帳を渡し、年1度の無料検診をしただけだとか。
国は被爆者に対して責任をとらないばかりか、原発推進派に都合の悪いことは一切隠そうとしているのです。原爆を落とされた被害国である日本が、加害国である米国に未だに隷属しているのです。
ICRP(国債放射線防護委員会)の放射線限度も大衆を守るためのものではなく、原子力の拡大を合理的に許容するために決められたもの。日本の許容値も同じで、けして大丈夫な数値ではなく、ここまでは我慢しなさいという数値なのです。
被爆に関する研究は日本だけでなく、米国・ロシア・ベラルーシなどの研究者や科学者が取り組んでいたそうですが、諸外国でも研究者達は原子力推進派により弾圧されたようです。

3番目に学んだことは、自分の身は自分で守らなければならないということ。
今日本中に原発が存在します。原発は核兵器と同じ、事故を起こさなくても放射線を放出しています。日本に住む限り、被爆から逃れることはできないのです。
日本だけでなく地球に住む限り、放射線から逃れられないのに、その治療法はまだ見つかっていないようです。著者は、自分の免疫力を減らさない生活習慣を心がけるしかないと述べています。

この本の著者の経歴は、今年95歳になる現役の内科医。広島で被爆して以来67年間6千人もの被爆者の治療に当たった人なのです。また彼は何度も日本の当局に捕まった時、「誰も被爆者の治療をやらないのなら、殺されても自分がやると覚悟していました。目の前で苦しんでいるたくさんの人が居るのですから。医者だったら何とかしたいと思ったのです。」と書いています。
そして日本でも世界でも放射能による晩発性の病気は「ないこと」になっている時代に、国連に治療法のない晩発性障害について訴え、放射線による「原爆ぶらぶら病」を世界に認めさせたそうです。このような立派なお医者さんが日本にいたことを心強く思いました。
彼は、福島の原発事故の後、後世にご自分の体験や研究を伝えたいと思って、この本を書かれたと思います。また、ご自身は生まれつき強い免疫力を持って生まれた方だと思いますが、広島で被爆したにもかかわらず、95歳の現在しっかり生きて、被爆の影響を減らすためには免疫力を衰えさせない生活習慣が大切だということを実証しているのです。
既に私達は多かれ少なかれ、被爆しているでしょう。これからまだまだ被爆し続けると思います。この本を読み終えて、内部被爆の恐さを再認識しましたが、自分の免疫力を信じて、それを大切にすれば、少しは影響を減らせるかもしれないという小さな希望を見つけたのです。
by amtask | 2012-06-11 11:04 | ◎ ひとり言 | Comments(2)
Commented by rabbitjump at 2012-06-12 10:34 x
日本に住んでいる1人として内部被爆の恐ろしさを感じます。
広島も長崎もその当時は計測もすぐにはできなかった時代を
病と闘いながら生きている人が沢山います。
苦しみを乗り越えて生きている人も沢山います。
原発がこの狭い日本に沢山あったことすら
福島の事故が起きるまでしらなかった無知さを恥じます。
今、日本では2人に1人がガンという報告があります。
ひとごとではありませんね。
この書を読んでみたいと思います。
Commented by amtask at 2012-06-12 15:07 x
rabbitさま
こんばんわ。長文を読んで下さって、有難うございました。
内部被爆の恐さを、ヒシヒシと感じました。
日本の指導者達が、福島の事故が収束していないのに、
おおい原発の再稼動を押し切ろうとしています。
不思議でなりません。
その反面、この本の著者のような立派なお医者さんが
いらっしゃるのを知って少し安心しました。
そしてすぐにでも原発を廃炉にして、安全で安価なエネルギーが
開発されるのを願っています。
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