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ひとり言ーAIGの高額ボーナス

最近のテレビニュース(CBC News)にチャンネルを合わせると、AIG・Bonus・Back-lash(激しい反発)・ Bailout(救済措置)と言う言葉が聞えてくる。昨日はオバマ大統領がAIG問題について演説したが、その中では何度も“Taxpayer”と言う言葉が発せられた。

今アメリカは税金の申告・納税時期を迎えようとしている。原則として法人が3月16日、個人は4月15日が今年の申告・納税期限。日本と違い、ほとんどのアメリカ人は自分で確定申告しなければならない。そんな訳で米国民、納税者意識が高いし、税金の使われ方にも神経質になるのは当然なこと。私はアメリカ人ではないし、アメリカのIRS(Internal Revenue Service- 米国財務省・内国歳入庁) に対し申告・納税の義務はないが、米国税理士の立場から、AIG問題はひとごととは思えない。税理士は納税者の味方になり、いつも納税者の利益を守るため節税を心がけているので、彼らの気持ちがよくわかる。そんな米国税理士の立場からAIG問題を考えてみた。

米国政府は、事実上破綻状態のアメリカの大手保険会社AIGに、計1700億ドルの公的資金を投入し、株式の8割を取得し、事実上 AIGを公的管理下に置いている。にもかかわらずAIGは、2008年分ボーナスの一部として幹部約400人に総額1億6500万ドル(約160億円)の支給し、それを米政府に通達。そのボーナスの支給は「優秀な社員を会社再建のために引き止めるため」だというが、ボーナスを受け取ってすぐ会社を辞めた幹部も数人いるという。そんな状況の中で、米国民のAIGへの非難が米金融当局の甘い対応への批判に変わり、金融政策に対する不信認に広がる可能性もある。AIG幹部へのボーナス支払い契約を知りながら、四回目の支援を決め、報酬制限も具体的にはなっていないからだ。
そこでオバマ大統領は、AIGに対して政府の権限を駆使して、ボーナスの支払いを阻止するため、あらゆる法的手段を探っていくよう財務長官に指示したという。

すでに渡してしまったボーナスを返還させることは難しいのでは思っていたら、意外にも簡単な方法があった。AIG株の大半を保有している米政府が経営権を行使し、AIGがボーナスの返還に応じない場合、ボーナスの90%以上に相当する特別税を課すというものだ。そしてこの法案は早急に提出され、また公的資金投入を受けたすべての金融機関の役員ボーナスに対して、70%課税することも提案しているという。

AIGの役員の中には6億円ものボーナスを手にする人もいる一方、アメリカには2ヶ月収入が途絶えただけで、ホームレスの転落する人が沢山いるという。貧富の差が大きいアメリカでは、景気の悪い今、貧しい人はより貧しくなってしまう。そんな貧しい人たちにも、場合によっては納税の義務が生じる。
日本と同様アメリカでも、庶民の所得はガラス張り。なぜなら働いて得た給与からは源泉徴収され、アメリカ国内の銀行利子や株式配当は、金融機関からIRSに直接報告が行くようになっている。だからほとんどの庶民は所得を隠しようがない。ましてアメリカは日本の違い、税の還付金や失業給付金にも課税される。
そんな庶民から所得税を取り立てるぐらいなのだから、この度のAIGの高額なボーナス、元はといえば庶民から集めた税金は何としてでも取り戻さなければならない。そのためには高率の税率を適用した特別税を課すのが、もっとも効果的で確実な方法に思える。彼らの道徳心を呼び覚まして、自主的返還など期待できないなら、税金を科すことによって強制的に取り立て、それでも税金を支払わない場合は、脱税と言う犯罪で捕まえることができるからだ。
そのボーナスを手にする前に、AIG幹部はすでに多額の蓄財をしているに違いない。
特別税の税率も、90%の税率ではなく100%の税率にしてもいいかもしれない。
そんな特別税が課せられたボーナスは罰金と同じ。だれもその「ボーナス」を欲しがらなくなるだろう。
アメリカのIRSも、普段は人々から敬遠される存在だが、このAIG問題では、庶民の味方、勧善懲悪の主役になれるかもしれない。
この世界中を巻き込んだアメリカ発の大不況、元はといえばウォール街の住民が原因を作ったともいえる。それなのに、その張本人が多額のボーナスを貰って沈む船から逃げて行く。米国民でなくても、そんな彼らを許せない気持ちになる。是非オバマ政権とIRSには、頑張ってもらいたい。

確かにAIGを潰すことは、アメリカだけでなく世界の経済に大きな影響を及ぼすだろう。
しかし、それを恐れて、こんな体質の企業を温存させることがよいとは思えない。
今は、オバマ大統領も米国民の味方のように思えるが、最終的にこのAIG問題をどう解決するのだろう。アメリカ国民でなくてもこの問題から目が離せない。
by amtask | 2009-03-20 01:23 | ◎ ひとり言 | Comments(4)
Commented by rabbitjump at 2009-03-20 08:17 x
本当に本当にamtaskさんのおっしゃる事に納得です。
日本でもこの問題報じています。
すごい金額をうけとる人もいるのですね、
格差社会の現実を目の当たりにしました。
目が離せない現実をしっかり見つめたいです。
Commented by amtask at 2009-03-20 15:09
rabbitさん こんばんわ。
毎日毎日、ここはアメリカかと思うぐらい、繰り返しAIG問題が
報じられています。法人の役員報酬も日本の比ではないと
聞いていましたが、所得格差は思った以上に大きいようです。
オバマさんはこの問題や格差社会を、どう解決していくのでしょうね。
Commented by 本当ですか? at 2009-03-21 19:18 x
しかし・・・資本主義の国では、働いた分報酬をもらっていいのではありませんか?大急ぎで税制を変えてまで取り戻さねばならないお金なのであれば、渡さなければ良かったのでありませんか。国が愚かとしか見えません。この新たな税制は資本主義を地におとした、死なせてしまったと感じました。格差問題があるとしたら、資本主義で解決して行けなかったのですか。今後アメリカでは会社役員の報酬は国に決めてもらえばいいですね。
Commented by amtask at 2009-03-22 02:16 x
本当ですか?さん
私は経済についての専門家ではないのですが、AIGの問題を初めとするアメリカ発の大不況、資本主義が行き過ぎた結果ではないかと思っています。AIGの場合、実質的に破綻し、公的資金に支えられて存続している企業です。AIGに限らず公的資金が投入された企業は、国の管理下におかれるのです。資本主義が壊れると、社会主義に近い状態になるのかもしれません。
資本主義の国でなくても働いた分の報酬を貰うのは、私も当然だと思います。でも一般的に、アメリカは普通の従業員にはボーナスも退職金もないのが普通です。ごく一部の幹部にだけ支給される高額ボーナス、AIGの従業員にも抵抗があるようです。
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