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ひとり言ーAIGの高額ボーナス(続)

そこはバンクーバーのアパートの一室、テレビをつけると、ニュースで「AIG」・「ボーナス」と言う言葉が繰り返される。何気なく聞いている私の頭の中で、「エイアイジー」と言う音がこだまのように響き渡るほど。米下院ではとうとう、AIGの幹部社員に支給した高額ボーナスに90%の特別税を適用する法案が可決された。その法案はAIGだけでなく業績悪化で公的資金が投入された他の大手企業にも適用されるという。オバマ大統領の強い姿勢を受けて、たった3日でこの法案が可決されたのだ。
課税の対象は、夫婦合算で25万ドル以上の社員が1月以降に受け取ったボーナス。
日本の給与所得者は年収2000万円を超える人は高額所得者として確定申告が必要になる。
アメリカでも25万ドルの月収は高額だ。更に幹部社員は、会社が健全であれば、業績に応じて高額のボーナスを受け取れるはずだった。しかし公的資金が投入されてしまった今、株主は国や国民ということになり、過去のボーナスを支払う契約は再考されるべきだったのに、契約を有効だとしてAIGは幹部社員にボーナスを払ってしまった。アメリカは、普通のサラリーマンは、AIGの社員でもボーナスも退職金も受け取れない格差社会。普通の勤労者の反発がうねりとなって、この問題を大きくした。民間の企業に公的資金が投入された時点で、その企業では資本主義での理論は通用しなくなる。AIGばかりでなく、業績悪化の企業が次々国有化されれば、次第に資本主義は社会主義に移行して行くことになるのだろう。事実、ノーテルというカナダの北米最大の通信機器メーカーでも、同じような問題が起きていると報道された。何年も前から、資本主義は崩壊し新しい経済のシステムができるだろうと予測されていたが、今その時期が来たのかもしれない。

バンクーバーでは、テレビを見る度にAIG問題が私の意識の中でクローズアップされていった。そして2日程前、私は東京の自宅に戻り、テレビのニュースを見た。AIGも金融危機のこともほとんど報道されていない。ここは北米大陸ではなく、極東の小さな国だった。
この日本で、熱気が伝わってくるような報道から離れ、冷静にAIG問題を考えてみた。
私はこの時期、クライアントのために、IRSへの税務申告書をいくつか作成しなければならない。私の頭の中はしばらくアメリカの税金のことでいっぱいになる。そのついでにこの特別税が課せられるボーナスは、確定申告でどのように処理されるのか、また税金とは何のかあらためて考えてみた。

税金の役割は公共サービス・富の再配分・景気の調整の3つがあり、特定の人や企業だけに税金を重くしたり軽くしたりせず、公平に課税されなければならないと学んだ。この特別税は所得の再配分に当たると思うが、民衆の反発に押されて、懲罰的な意味合いがあるような気がしてならない。
というのは、巨額の公的資金を投入するとき、財務長官はこの高額なボーナスの契約を知っていたという。そこでルールもない状態で、AIGは幹部社員にボーナスを払ってしまった。今度はこの問題で財務長官の責任がとり沙汰されているようだが、財務長官が支払いを阻止または制限するルールを故意に決めなかったのか、ただボンヤリしていただけなのかわからない。いずれにしても民衆の反発が予想以上に大きくなってしまったので、それを取り戻す方法を考えたのだろう。しかし一度手にしたおいしいボーナス、そう簡単に取り戻せるわけがない。唯一の方法は90%の特別税だった。資本本主義も行過ぎれば、富が一握りの富裕層に集中し、貧富の差はますます拡大してしまう。それに歯止めをかけるためにも、支払を阻止するルールが必要だったとは思うが、90%課税の特別税は、ゲームの途中でルールを変えるという感じが漂ってしまう。結局「公平な課税」のためには、ゲームが始まる前にルールを決めておくことが必要だった。財務長官がボーナスが支払われる前に、ある程度大多数の人が納得するルールを決めておけば、これほど大きな反発は起きなかったと思う。

さて日本では、「適正な富の配分」と「公平な課税」が行なわれているのだろうか。源泉徴収と年末調整ですべてが終ってしまう普通のサラリーマンにとって、AIGのボーナス問題は遠い国の馴染みの薄い問題なのかもしれない。
by amtask | 2009-03-27 12:09 | ◎ ひとり言 | Comments(6)
Commented by rabbitjump at 2009-03-29 18:18
ほんとうに高級ボーナスで驚きでした。
想像できない額に愕然です。
今回は早い法案可決でよかったと思います。
日本ではどうでしょう、サラリーマンはすでに
ひかれているので実感がわかないと思います。
最近ではマスメディアで騒がれるので
少しずつ税金の使い道にも関心が集まって
きているように思いますが、私もお任せではなく
もっと関心を持ちたいと思いました。


Commented by はっちゃん at 2009-03-29 23:44 x
amtaskさん、お帰りなさ~~い(^o^)丿
東京、寒いでしょ? 風引かないように気をつけてくださいね。

・・・AIGのボーナス問題は遠い国の馴染みの薄い問題なのかもしれない。
確かに(>_<)、その額にだけ驚きを表したけど・・・内容はと、言われると・・・
在東京中にお目にかかりたいです。
その時には経済のお話も、よろしくお願いいたします。
今回はどんなご予定かしら? アチコチ旅行に?メールで連絡しましょう(*^_^*)


Commented by amtask at 2009-03-30 09:46 x
rabbitさん おはようございます。
今朝も寒いですね。お元気ですか?

アメリカの大手企業の管理職の報酬は日本とは比較にならないほど高いと聞いていましたが、これほどまでとは思いませんでした。日本は貧富の差が開いてきたとは言え、アメリカほどではないと思います。でも税金などの公的資金の使われ方をウォッチしなければならないし、必要があれば、声を上げなければと思います。
Commented by amtask at 2009-03-30 09:57 x
はっちゃん、ただいま~!
寒くて震えています。ここ2~3日、着る物もないし、時差ぼけでじっとしていました。これから少しお仕事ですが、近いうちお目にかかりましょう。楽しみにしています。

経済のお話、こんな激動の時代私にもよくわかりませんが、離れてみると日本の独自性が見えるような気がします。
Commented by yyhhko at 2009-04-01 23:01
amtaskさんお帰りなさい♪ 寒くて体調を崩されていませんか?

経済の話 私も苦手でよくわかりません。

アメリカの大企業に公的資金が投入されるとは今まで聞いたことが
なかったような・・
そして幹部方への報酬があまりにも高額なのに驚いてしまいました。
日本の会社の幹部と社員の給料体系はそれほど格差がないようですがが
全体としてリーダーシップがなくなり 責任の所在は??の会社もあるようです。
そのためか業績が極端に悪くなっている会社もあるとか・・。
かといって AIGのように会社を動かしている上層部だけが高額なボーナス
を取るのも論外ですね。
公的資金の使われ方 個人がチェックするといっても限度があります。
国民にわかりやすいようにしてほしいです。

私もamtaskさんのお話 ぜひ拝聴したいです。

お会いするのを楽しみにしています。
Commented by amtask at 2009-04-02 10:00 x
浮遊子さん
おはようございます。毎日寒いですね。桜は満開のところもあるようですが、お花見の気分になれないほど、寒いしお天気がよくないし・・・
今の世界の経済みたいです。といっても、私も経済のお話よく分るわけではないですが、カナダで見たテレビ、毎日耳にタコができるほど
AIG、GMなどのニュースを流し続けていました。そこで自然に考えさせられたのです。なぜあれほど激怒して騒ぐのかというと、
所得格差が開きすぎるだけでなく、AIGのボーナス、公的資金から出ていると考えれば、国民が騒がない方がおかしいということなのでしょう。民間の企業が、自分達の稼いだ利益をどう配分しようと自由なはずですが・・・。日本でも似たようなこと、沢山ありそうですね。
是非、近いうちにお目にかかりましょう。楽しみにしています。
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